FacebookXPocket
インテリジェンス

ドイツとイギリスの防衛協力強化に関する共同宣言

2024年08月08日

2024年7月24日、ドイツ国防省とイギリス国防省は、防衛協力を強化するための共同宣言に署名した。ドイツのボリス・ピストリウス国防相とイギリスのジョン・ヒーリー国防長官大臣が署名したこの宣言は、21世紀の共通の課題に対処し、両国の防衛関連の共通利益を最善に確保することを目的としている。

 

この共同宣言の戦略的背景として、ロシアのウクライナに対する侵略戦争や悪化する戦略環境に鑑み、ヨーロッパの安全保障を維持するための統一された対応が必要とされることが挙げられる。両国の国防大臣は、NATOの強固な同盟国としてNATOの原則に対するコミットメントを再確認し、NATOに対する欧州の貢献を強化する必要性を強調した。

 

この共同宣言における優先目標としては、①防衛産業の強化、②欧州・大西洋安全保障の強化、③相互運用性の強化、④新たな脅威への対処、⑤ウクライナ支援、⑥Deep Precision Strike(長距離能力の協力)が掲げられている。

 

①防衛産業の強化においては、欧州における防衛産業基盤の育成と促進に貢献する機会を模索し、共同調達イニシアティブと相互運用性を促進し、生産能力と技術革新を強化するための研究開発努力を推進することを目指している。また、②欧州・大西洋安全保障の強化に向けては、NATOが防衛体制の礎石であることを確認し、NATOを強化し、NATOとEUの補完的協力を強化し、同盟国間の対話を更新し、国際的なフォーラムにおける集団行動を支援するために、各国の役割を果たすよう努めることが含まれる。

さらに、③相互運用性の向上に向けては、シームレスな連携の重要性を認識し、あらゆる領域におけるドイツ連邦軍とイギリス軍の間での相互運用性を高め、NATOにおける標準化を強化することを目指している。④新たな脅威への対処としては、ハイブリッド戦争やサイバー脅威、気候変動など、進化する安全保障の課題に対する共同の取り組みを模索するとしている。⑤ウクライナ支援に関しては、長期的な軍事支援を調整し、ウクライナの防衛能力を強化することを目指している。⑥長距離能力の協力においては、パートナーと共に長期的かつ包括的な協力を行うとされている。

 

防衛間協力体制については、防衛協力の舵取りを任務とする上級レベルのグループの設置や、防衛大臣との年次会合の開催が開催される可能性があるほか、国防に関する国会議員間の対話の強化や、共同戦略立案フォーラムの開催も提案されている。

防衛産業協力については、タイフーン計画等の既存の枠組みを活用するほか、閣僚級装備品・能力協力(Ministerial Equipment and Capability Cooperation:MECC)を活用し、共同調達イニシアティブの促進、NATO標準化の推進、技術共有の推進を約束している。また、両国国防相は定期的な協議を含め、共同プログラムの枠組みにおける防衛輸出についても意見を交換し、両国の安全保障を強化し、それぞれの防衛産業基盤を支援するとしている。

軍事協力については、新たな安全保障上の課題への協調的かつ効果的な対応を確保するため、防衛外交、相互運用性、軍事ドクトリン開発、ハイレベルの戦略的交流に重点を置き、軍事協力を強化する機会を模索することが述べられている。

出典:Ministry of Defence & The Rt Hon John Healey MP, 2024, "Joint Declaration on Enhanced Defence Cooperation between Germany and the United Kingdom," GOV.UK(元記事公開日:2024/7/24、英国)

出典URL:https://www.gov.uk/government/news/joint-declaration-on-enhanced-defence-cooperation-between-germany-and-the-united-kingdom